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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
よく世の中の人達はあんなのん気相な顔をして、生きていられたものだね」
「それで、結局どうしたというのだ」
「まあ聞きたまえ。その時おれは、親父の殺された晩、一時頃に、なぜおれが目をさましていたかという理由を思出したのだ。今度の事件で、これが最も重大な点だ。一体おれは、一度寝ついたら朝まで目をさまさないたちだ。それが夜半の一時頃、ハッキリ目をさましていたというには、何か理由がなくてはならない。おれは、その時まで、少しもそこへ気がつかなんだが、猫の鳴声で、すっかり思出した。あの晩にもやっぱり、同じ様に猫が鳴いていたのだ。それで目をさまされたのだった」
「猫に何か関係でもあったのかい」
「まあ、あったんだ。ところで、君はフロイドのアンコンシャスというものを知っているかしら。兎も角、簡単に説明するとね、我々の心に絶えず起って来る慾望というものは、その大部分は遂行されないでほうむられてしまう。あるものは不可能な妄想であったり、あるものは、可能ではあっても社会上禁ぜられた慾望であったりしてね。これらの数知れぬ慾望はどうなるかというと、我々みずから無意識界へ幽囚してしまうのだ。