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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
次の部屋に寝ていた母親や妹は、ちっとも気がつかなかった相だけれど、そういう風に、夜中に庭へ出て、そこにおいてある、大きな切石の上に腰かけて涼むのが親父のくせだったから、そうしている所をうしろから、やられたに相違ない」
「突いたのかい」
「後頭部を、余り鋭くない刄物で、なぐりつけたんだ、斧とかなたとかいう種類のものらしいのだ、そういう警察の鑑定なんだ」
「それじゃ兇器が、まだ見つからないのだね」
「妹が母親を起して、二人が声をそろえて、二階に寝ていた兄貴とおれを呼んだよ。うわずった、その声の調子で、おれは、親父の死がいを見ない先に、すっかり事件がわかったような気がした。妙な予感というようなものが、ずっと以前からあった。それで、とうとう来たなと思った。兄貴と二人で、大急ぎで降りて行って見ると、一枚開いた雨戸の隙間から、活人画の様に、明い庭の一部が見え、そこに、親父が非常に不自然な恰好をしてうずくまっていた。妙なものだね、ああいう時は。おれは暫く、お芝居を見ている様な、まるで傍観的な気持になっていたよ」
「……それで、いつ頃だろう、実際兇行の演じられたのは」
「一時頃っていうんだよ」