轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
「改造」1939(昭和14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页
と低く言って、手をひいた。左の人差指の先に血が玉になっている。刺しを酷くしたらしい。咄嗟に、寿女はその手をひったくって、指先の血を吸った。涙ぐんでいた。
また、或る日、師匠の供をして連之助が外から戻って来ると、玄関まで出迎えた寿女がなかなか引きかえして来ない。銀三が行ってみると、寿女は三和土にしゃがんで履物を片付けている。びくっとして面を上げたが、袂で連之助の下駄の埃りをはらっていたところであった。
寿女が加福の師匠の許へ通い出してから、三年あまり過ぎていた。今では師匠も眼をはなして、その技に委せている。寿女は念を凝らしてかかり詰めた。針にのった静かな心が、枠に対うと自然に滑り出す。出しぬけに、烈しいものがこの針を衝き進め、寿女はまごつく時がある。烈しいものを綯い混ぜに針がすすんで、こんなとき、よく、師匠に窘められた。
或る晩、男弟子たちが他出した折りに、師匠が寿女を呼んで言った。
「銀三があなたを家内にしたいと言うのだが、どうでしょう」
師匠も時にはさりげのない顔で揶揄いをいうことがあるので、また、それかと寿女は笑いながら取り合おうともしなかったが、黙している師匠の、いつまでも恬かな容子を視ているうちに、不意にそわそわし出した。