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しろいかげ

白い影

小川 未明

「婦人公論」1923(大正12)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,097 字 · 13 页

青空文庫

と、一時は、こんなうわささえしたものがあった。また夜はなるべく外に出ずに、白い影を見ないものと、早くから戸を閉めてしまうような臆病者も少なくはなかったのであります。

すると、こんどは、いままでとはまったく違ったうわさがひろまりはじめました。

「今年は、いままでにないことだ。暴風もこず、米はよくできて豊年だ。昔の人の話に、白い影が入ってきた年は豊年だということだ。」というようなうわさがたちはじめると、

「大河にかかっている鉄橋の根もとが腐れていたのをこのごろ発見した。白い影が線路の上を歩いていたのは、それを注意するためだった。」と、いうような説が、後から後からつづいて起こったのであります。

町の新聞は、また白い影を科学的に批評をしていました。ある理学士は、白い男のように見えたのは、水蒸気のどうかした具合で、人間の形に見えたのであろう。秋から冬にかけては、毎夜のごとく、月のいい晩には、白いもやがいろいろの形で立ち上るものだ。また、夏の日、野原で見た、白い大男というのも、おそらく同一の現象で、雲のようなものではなかろうかといって、なんでもなく、それを解決していました。