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しろいみち

白い道

徳永 直

「新潮」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页

青空文庫

「こっちがいいでしょう」

深水がベンチのちりをはらって、自分のとなりに彼女を腰かけさせ、まだつったっている三吉を、反対がわのベンチへ腰かけさせてから、彼の改まったときのくせで、エヘンと咳ばらいした。

「こちら、青井三吉君――、こちらは野上シゲさん――」

ジーンと耳鳴りがしていて、あいてをみずに三吉は頭をさげた。すると、意外にもうつむいていた赤っぽい頭髪が、すッとあおのいた。

「――よろしく、ご交際、おねがいします」

深水がたもとから煙草をだして点けた。三吉もその火で吸いつけようとするが、手がふるえていて、うまく点かない。点かないながら――ゴコウサイ――というのが、どきんと頭にのこっている。

「まず、こういうことは双方の理解が、一等大切だと思います。双方の精神的理解、これがないというと、それはつまり野合の恋愛であって――」

石の卓に片肘をついている深水の演説口調を、三吉はやめさせたいが、彼女は上体をおこして真顔できいている。たかい鼻と、やや大きな口とが、すこしらくにみられた。三吉はわざとマッチを借りたりして妨害するが、深水の演説口調はなかなかやまない。そのうち、こんどは急に声の調子まで変えていった。