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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
「――しかし、つまるところはですナ、ご両人でよろしくやってもらうよりないんだよ。わしはその、月下氷人でネ、これからさきは知らんですよ――」
それで深水が笑うと、彼女も一緒にわらった。深水は最初に彼らしい勿体ぶりと、こっちが侮辱されるような、意味ありげな会釈をのこして、小径のむこうに去っていったが、三吉は何故だかすこし落ちついていた。二人きりになってしまったのに、さっきまでの、何ときりだすかという焦慮と不安は、だいぶうすらいでしまっていた。
「あのゥ――」
彼女の方からいいだした。
「妾、あなたのこと、まえから知っていました。あなたの御活躍なさってるご容子――」
三吉は呆気にとられて、あいての大きすぎる口もとをみた。
「――いつか、新聞に“現代青年の任務”というのをお書きになったんでしょ。妾、とても、感激しましたわ」
東京弁をまじえて、笑いもせずにいっている。そのあいての顔から視線をはずしているのに、口から鼻のまわりへかけてゆれうごくものが、三吉の頭の中にある彼女の幻影を、むざんにうちくだいてゆくのが、ありありとわかった。
「貴女のうちは遠くて、通いがたいへんでしょう」