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しろいみち
白い道
徳永 直
「新潮」1948(昭和23)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页
もまがってから、長屋のはしっこの家のかど口に「日本友愛会熊本支部事務所」とかいた、あたりには不似合な、大きな看板のあるところへでた。
「おう、青井」
むこうから、三吉をよぶ声がして、つづけてわらい声がいった。
「どうだったい、きょうは?」
路地にひらいた三尺縁で、長野と深水が焼酎をのんでいた。長野は、赤い組長マークのついた菜葉服の上被を、そばの朝顔のからんだ垣にひっかけて、靴ばきのままだが、この家の主人である深水は、あたらしいゆあがりをきて、あぐらをかいている。
「その顔つきじゃ、あかんな」
チャップリンひげをうごかして長野がわらった。長野は大阪からながれてきた男で、専売局工場の電機修繕工をしている。三吉たちの熊本印刷工組合とはべつに、一専売局を中心に友愛会支部をつくっていて、弁舌がたっしゃなのと、煙草色の制服のなかで、機械工だけが許されている菜ッ葉色制服のちがいで、女工たちのあいだに人気があった。三吉は縁のはしに腰かけ、手拭で顔をふいたが、二人のわらいごえにつれられて、まげに赤い手絡をかけた深水の嫁さんが、うちわをそッと三吉のまえにだすと、同時にからだをひきながら、ころころとわらいころげた。