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しろすみれとしいのき

白すみれとしいの木

小川 未明

「読売新聞」1920(大正9)年1月9~10日、12日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,429 字 · 5 页

青空文庫

二

弟は、こんな不運なくらいなら、いっそ河にでも入って死んでしまったほうがいいと思いました。

いつのまにか、寒さのために雪の上は堅く凍っていました。それは鋼鉄のように、飛び上がってもカンカンと響くばかりで、埋まることはありませんでした。

弟は雪の上を渡って、河のある方へいきました。すると、河の水もまた鋼鉄のように凍っていたのであります。

身を投げて死のうにも、水がないし、どうしたらいいだろうと思って、途方に暮れていますと、はるかかなたに、きばのようにとがった高い山が、月に照らされて見えるのでありました。

昔から、あの山の下には、鬼が住んでいるといわれていました。

二

弟は、どうせ死ぬなら、いっそ鬼にでも食われて死んでしまったほうがいいと思いました。それにしても、何十里あるかわかりませんでした。

月光に照らされている、その遠い山影を望みますと、もし雪を渡ってまっすぐにいくことができたならそんなに遠くもないだろう。駆けて、駆けていったら、今夜の中にもいかれないことはないと思われました。

弟は、そう思うと、雪の上をひた走りに走りはじめたのです。河も野もどこも平坦な白い畳を敷き詰めたようでありましたから、どんな近道もできるのでありました。