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はくもくれん

白木蓮

豊島 与志雄

「芸術」1947(昭和22)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 24 页

青空文庫

その眼眸の清らかさが、肉附や皮膚の薄い顔の明るさをいっそう際立たせ、片方の細長い小さな糸切歯が、薄い膚の微笑みの可愛さをいっそう際立たせている。その全体が、なにかしら運命に対する抵抗力の弱さ、つまり薄命なものを思わせる。私が庇うようにかき抱いてやったら、彼女はどうするだろうか。

私が口を噤むと、彼女も黙っている。買物袋を膝にかかえ、白いハンケチを持ちそえ、赤い帯をしめ、かすかに化粧の香りをさせてる、都会の娘だ。田舎の娘ならば、石に腰掛けて夕日を眺めるなどは、退屈に違いない。――夕日は薄い雲に包まれ、円盤のようにくるくる廻りながら、速かに沈んでゆく。冷い風が地面に沿って足下を流れる。

「少し歩こうか。」

「ええ。」と彼女は答える。

「もう帰ろうか。」

「ええ。」と彼女は答える。

どちらにしていいか、私の方でまごつくのだ。ただ、そこで彼女と別れてしまうことは、しにくい。私は彼女について行く。加津美までついて行く。

加津美へは、喜美子は裏口からはいるが、私はそうはいかない。表からはいれば、座敷へ通されるし、座敷へ通ればお客さまだ。お島さんが万端の面倒をみてくれるし、お上さんも顔を出すし、黙っていても桃代が呼ばれるだろう。