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ひゃくゆきょう

百喩経

岡本 かの子

「三田文学」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页

青空文庫

は は は は は は。おれが思うのには聖オウガスチンという男はあわてものさ。あの火花を見ただけで神様の体まで見てしまったものと早合点したのさ。あれは神様じゃ無いよ。あれは神様の後光だけなんだよ。神様の体なんていものは伊太利の生章魚のようにその居場所によってその居場所と同じようになっちまうんだから到底見えやしないよ。

そうかい、おまえさん、橋を渡って河岸を歩いて帰りなさるかい。今日は天気が宜いから曳舟から岸壁の環へ洗濯紐を一ぱい張ってあるから歩き憎いよ。は は は。あすこの釣好きの馬鹿を見なさい。釣った魚を、ポケットへ蔵い込んで大事にボタンを締めたよ」

乗レ船失レ盂喩

或愚男が海に盂を落した。男は直ちに落した箇所の水流の具合など描き取って置いた。二ヶ月して他国で前に描いて置いた水の具合いに似た海に来た。男は盂を得ようとして其処を探して得なかった。

浪華の堀を出て淡路の洲本の沖を越すころは海は凪いで居た。帆は胸を落ち込ました。乗込客は酒筒など取り出した。女に口三味線を弾かせて膝の丸みを撫で乍らうとうとする年寄りもあった。

陸は近かった。松並木は一重青く浮き出して居た。