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ひゃくしょうのゆめ

百姓の夢

小川 未明

「女性日本人 4巻1号」1923(大正12)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,278 字 · 15 页

青空文庫

あるところに、牛を持っている百姓がありました。その牛は、もう年をとっていました。長い年の間、その百姓のために重い荷をつけて働いたのであります。そして、いまでも、なお働いていたのであったけれど、なんにしても、年をとってしまっては、ちょうど人間と同じように、若い時分ほど働くことはできなかったのです。

この無理もないことを、百姓はあわれとは思いませんでした。そして、いままで自分たちのために働いてくれた牛を、大事にしてやろうとは思わなかったのであります。

「こんな役にたたないやつは、早く、どこかへやってしまって、若いじょうぶな牛と換えよう。」と思いました。

秋の収穫もすんでしまうと、来年の春まで、地面は、雪や、霜のために堅く凍ってしまいますので、牛を小舎の中に入れておいて、休ましてやらなければなりません。この百姓は、せめて牛をそうして、春まで休ませてやろうともせずに、

「冬の間こんな役にたたないやつを、食べさしておくのはむだな話だ。」といって、たとえ、ものこそいわないけれど、なんでもよく人間の感情はわかるものを、このおとなしい牛をひどいめにあわせたのであります。