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ひゃくしょうやのすけのはなし
百姓弥之助の話
中里 介山
01 第一冊 植民地の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页
てもいけない、少し注意を欠くと消えてしまう、そう云う場合に炭だと、一たんかけて置けば或程度まで放任して他の仕事が出来るというものである。
それから今日どこの田舎家でも行って見ればわかる事であるが家中がくすぶりきって真黒くなって居る、あれは皆多年の薪生活の為であって、風流としては多少面黒いところもあるかも知れないが一体に甚だ非文明的である。これを炭化にすればあれ程家中を黒光り煤だらけにしないでもすむのである。然し木炭の価は甚だ高い、年々高くなる一方である、今年あたりは一俵二円もする、農民生活で木炭などを買いきれたものではない。まだまだ日本の農村生活から囲炉裏を奪う事の出来ないのはわかっているが、そこで素材を使うべき場合には相当限定をして置いてあとはこの自家製木炭で調節するようには出来ないものか、この村あたりではまだこの炭化方法を実験して居るところはない様だ、これは一つ大いにはやらせて見たいものだと思って居る。
十三
百姓弥之助は今年の正月を植民地で迎えた。
元日と云っても相変らずの自炊生活の一人者に過ぎない、併し今年は塾の若い者に雑煮の材料だけをこしらえさせて、それから後は例に依っての手料理で元日の朝を迎えたと云う訳だ。