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ひゃくしょうやのすけのはなし

百姓弥之助の話

中里 介山

01 第一冊 植民地の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,621 字 · 99 页

青空文庫

昨晩の大晦日には可なりの夜深しをしたものだから、朝起きたのは六時であった。炉へ火をたきつけて自在へ旧式の鉄の小鍋を下げて、粗朶を焚いてお雑煮を煮初めた。それから半リットルばかりの清酒をお屠蘇のかわりとして、昨日炊いて置いた飯をさらさらとかき込んでそれで元日の朝食は済んだわけだ。

至って閑散淡泊なものだが、然しこの食料品としては切り昆布とゴマメ数の子のたぐいをのぞいては、全部自分の農園で出来たものだと云う事が特長と云えば特長だろう。そこで、昨年度の弥之助の農園に於ける収穫を概算して見ると次の様な事になる。

小麦   約十二俵

大麦   十俵

陸稲┌糯 六斗五升

└粳 五石

馬鈴薯  約四百貫

玉蜀黍  三斗

西瓜   八十箇

薩摩薯  五百貫

茄子   若干

胡瓜   若干

梅    四斗

茶    一貫目

牛蒡   五十貫

生薑   五貫目

大根   若干

蕎麦   三斗

菊芋   若干

里芋┌八ツ頭 三俵

└小芋 二俵

木炭   五俵

右の外、莢豌豆、トマト、葱、隠元豆、筍、鶏卵、竹木、藁――等の若干がある。

これに依って見ると、まだまだ中農までも行かない水呑程度の百姓だろう、収穫はこんなものだが、これに投じた新百姓としての固定資本や肥料、手間等の計算はここにしるさない事にする。