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すかいさんきこう
皇海山紀行
木暮 理太郎
「山岳 一六の三」1923(大正12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,720 字 · 24 页
降りがちな天候は、十一月に入ってもからりと晴れた日は続かなかった。ことに土曜から日曜へかけてはよく降った。この意地悪い雨のために出鼻をくじかれて、出発はもう予定より三週間も遅れてしまった。これがもし紅葉見物を兼ねての旅であったならば、目的の一半は既に失われた訳であるが、皇海山に登ることが主眼であったから、秋の旅とはいえ、紅葉の方はどうでもよかったのである。ただ余り寒くなって山に雪が来ては困ると思った。
皇海山とは一体何処にある山か、名を聞くのも初めてであるという人が恐らく多いであろう。それもそのはずである。この山などは今更日本アルプスでもあるまいという旋毛まがりの連中が、二千米を超えた面白そうな山はないかと、蚤取眼で地図の上を物色して、此処にも一つあったと漸く探し出されるほど、顕著でない山なのである。自分も陸地測量部の男体山図幅が出版されて、始めて「皇海山、二千百四十三米五」ということを知った。そしてその附近には二千米を超えた山がないのを見て、これは面白そうだと喜んだ。勿論かく喜んだのは自分一人ではなかったであろうと想われる。
しかし実際展望したところでは、この山はかなり顕著なものである。