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すかいさんきこう

皇海山紀行

木暮 理太郎

「山岳 一六の三」1923(大正12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,720 字 · 24 页

青空文庫

のみならずその中には枯枝が縦横に交錯しているので明るくなって助かったと思ったのもつかの間、歩行は以前よりも遥に困難となった。その代りに下り一方である。ここは笹が深く燃料も豊富であるから、水はないが、携帯の食料で一夜を明すには相当の場所であった。しかし峠も近い事と信じていたので、なおも下りを続けてついに鞍部に達した。けれども峠の道はない。もしあっても暗くて探し出すのはむずかしい。午後三時頃から小歇となっていた雨がまた降り出して、風さえも加って来た。五時半頃である。前方右手の谷間に火の光が明るく雨や霧ににじんで見える。大方上州峠の途中にあるというお助小屋か、さもなくば鉄索運転の番小屋であろうと思う。遠くもないようであるが、到底そこまでは行かれない。一層のこと今夜はこのまま夜明しをしようではないかと無造作に話がまとまって、右手の落葉松を植林した斜面を少し下り、下草の多そうな処へ寄り懸るように腰を据えて、藤島君は防水マントを被り、自分は木の幹や枝でばりばりに裂けた蝙蝠傘を翳して、全く徹夜の準備が出来た。あとは夜の明けるのを待つばかりだ。その夜明けまでの長さ。