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とうなん

盗難

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,371 字 · 13 页

青空文庫

「そいじゃあ奥さん、

よく御不事に生きて被居っしゃいましたねえ。

兎に角皆が気分が悪かった。

そして今夜は誰か起きて居なけりゃあいけないと云う事になったけれ共どれもどれも気が向かない。

まして女中などを起して置いたって、自分の方からぶつかっても魔睡剤に掛って仕舞って、泥棒が「此処をあけろあけろ」と怒鳴りでもすると、

「いらっしゃいまし。

と云って開けて遣りそうだと云うので、結局夜光りの朝寝坊の私が夜番をする事になった。

「ああいいともいいとも私が居りゃ泥棒だって敬遠して仕舞うさ。

などと云いながら、少し夜が更けると、皆の暑がるのもかまわず、すっかり戸を閉めて、ガラス戸にはカーテンをすきまない様に引いた。

そして、そこいら中に燈をカンカンつけた中に、小さい鐘を引きつけて、私は大変強そうに、自信あるらしい様子をして夜番を始めた。

勿論、すぐ傍には両親の寝室があり、向うの方では書生がちゃんと起きて居るのだから決して私一人なのじゃあない。

けれ共私は強くなくちゃあならないと思った。

勿論強いんだろうとは思うけれ共、大抵の時には、いつもこわい事の済んで仕舞った頃漸々強さが出て来るので、一度だって強いと思われた事がない。