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とうなん
盗難
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,371 字 · 13 页
若し自分でも、フト用足しに起きでも仕て、彼那どこの馬の骨だか分りもしない奴の錆棒なんかで、グーンと張り倒されたなりにでもなって仕舞ったら、どんなだったろう。
さぞ私は美くしく、賢こく、好いお嬢様であった様に云われる事だったろうに。
美人と云われたけりゃ身投げしろと云われた下女の様な事を考えて居たのである。
家中は、畳の上まですっかり雑巾をかけられた。
風呂場の手拭では、どんな事をしたか知れたものでないと云うので、すっかり新らしいのに掛け換えられ、急に呼ばれた大工は、「本職の奴等」につけ込まれない様にしまりをすっかりしなおした。
そして家中が、何だかザワザワした様子で午後になると、第一に母が頭の工合が大変悪いと云い出した。
それに続いて、私も何だか後頭部が重くて堪えられないと云うものが沢山出て来て、夜頃には家中の者が渋い顔をして、
「どうもこれはただじゃあない。
と云い合った。
そこで一番気分の悪い母が医者へ電話をかけて泥棒の事をすっかり話してどうも魔睡剤を掛けられたのじゃああるまいかと思うが、若しそうだったらどうしましょうと訊いた。
そうすると、電話口でお医者さんは大笑いをして云ったそうである。