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めらはかせのふしぎなはんざい

目羅博士の不思議な犯罪

江戸川 乱歩

「文藝倶楽部 探偵小説と滑稽小説号」博文館、1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,493 字 · 31 页

青空文庫

云うまでもなく、それは、向うの窓の黄色い顔の奴に、僕がそこにいることを知らせる為ですが、僕の方からは、決してうしろを振向かぬ様にして、相手に存分隙を与える工風をしました。

三時間もそうしていたでしょうか。果して僕の想像が的中するかしら。そして、こちらの計画がうまく奏効するだろうか。実に待遠しい、ドキドキする三時間でした。もう振向こうか、もう振向こうかと、辛抱がし切れなくなって、幾度頸を廻しかけたか知れません。が、とうとうその時機が来たのです。

腕時計が十時十分を指していました。ホウ、ホウと二声、梟の鳴声が聞えたのです。ハハア、これが合図だな、梟の鳴声で、窓の外を覗かせる工夫だな。丸の内の真中で梟の声がすれば、誰しもちよっと覗いて見たくなるだろうからな。と悟ると、僕はもう躊躇せず、椅子を立って、窓際へ近寄りガラス戸を開きました。

向側の建物は、一杯に月の光をあびて、銀鼠色に輝いていました。前にお話しした通り、それがこちらの建物と、そっくりそのままの構造なのです。何という変な気持でしょう。こうしてお話ししたのでは、とても、あの気違いめいた気持は分りません。