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めらはかせのふしぎなはんざい

目羅博士の不思議な犯罪

江戸川 乱歩

「文藝倶楽部 探偵小説と滑稽小説号」博文館、1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,493 字 · 31 页

青空文庫

三

「失敬しました。どうか先をお話し下さい」

私は慇勲に、私の誤解を詫びた。

三

「事務員は、たった一人で、三晩というものその魔の部屋にあかしました。しかし何事もなかったのです。彼は悪魔払いでもした顔で、大威張りです。そこで、僕は云ってやりました。

『あなたの寝た晩は、三晩とも、曇っていたじゃありませんか。月が出なかったじゃありませんか』とね」

「ホホウ、その自殺と月とが、何か関係でもあったのですか」

私はちょっと驚いて、聞き返した。

「エエ、あったのです。最初の香料ブローカーも、その次の部屋借り人も、月の冴えた晩に死んだことを、僕は気づいていました。月が出なければ、あの自殺は起らないのだ。それも、狭い峡谷に、ほんの数分間、白銀色の妖光がさし込んでいる、その間に起るのだ。月光の妖術なのだ。と僕は信じきっていたのです」

青年は云いながら、おぼろに白い顔を上げて、月光に包まれた脚下の不忍池を眺めた。

そこには、青年の所謂巨大な鏡に写った、池の景色が、ほの白く、妖しげに横わっていた。

「これです。この不思議な月光の魔力です。月光は、冷い火の様な、陰気な激情を誘発します。