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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
のは、あっぱれ名をおしむ武士とみえた、あれを死なすのはじぶんのほんいでないけれども、ゆみやとる身の意地であるからかんにんしてもらいたい、そなたもながのろうじょうでさぞくろうをしたことだろう」と、そこは骨肉のおんあいだがらゆえ御じょうあいもかくべつで、わけへだてないおものがたりがござりまして、すぐに織田こうずけの守どのへおあずけなされて、よくいたわってとらせるようにとの御諚でござりました。
いくさの方は二十七にちのあさからやんでおりましたが、おいちどのをわたしたうえはもはや猶予することはない、しろをひといきにもみつぶして浅井おやこに腹をきらせるばかりだと、のぶなが公おんみずから京極つぶら尾というところへおのぼりになってそうぐんぜいに下知をなされ、ひらぜめにせめおとせとおっしゃいましたので、えい、えい、おう、と、寄せ手はすさまじい鬨のこえをあげて責めにかゝったのでござります。このとき御いんきょ久政公の丸にはぞうへい八百ばかりこもっておりまして、四方の持ちくちをかためておりましたけれども、てきは眼にあまる大軍のうえに、しばた修理のすけどのがさきにたって塀に手をかけ、ひた/\と乗りこんで来られましたので、ごいんきょもいまはこれまでとおぼしめされ、いのくちえちぜんの守どのにしばらく寄せ手をさゝえ