轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

ときよりまたひとしおでござりました。それにしてもこれほどのおかたが早くから不縁におなりなされ、つゝむにあまる色香をかくしてあじきないひとりねのゆめをかさねていらっしゃるとは、なんということか。しんざんの花は野のはなよりもかおりがたかいと申しますが、春はお庭にきて啼くうぐいす、あきは山の端にかたぶく月のひかりよりほかにうかゞうものゝない玉簾のおくのおすがたを、もし知るひとがありましたら、ひでよし公ならずとも煩悩のほのおをもやしたことでござりましょうに、とかくよのなかの廻りあわせはこうしたものでござります。

そんなぐあいで、そのころのおくがたは、花さく春のふたゝびめぐりくるときをお待ちあそばす御様子も見えましたが、やはりむかしのおつらかったこと、くやしかったことを、きれいにお忘れにはならなかったらしゅうござります。それと申しますのは、わたくし、あんなことはあとにもさきにもたった一遍でござりますけれども、ある日御りょうじをつとめながらお話のお相手をしておりましたとき、何かのはずみで、おもいがけないおことばを伺ったことがあるのでござります。