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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
ことはしかと申しあげかねますけれども、お女中がたがより/\にひそ/\ばなしをなされますのを、わたくし小耳にはさみまして、さてはひでよし公、小谷のときよりれんぼなされていらしったのだ、あの時そうとにらんだことはやっぱり邪推ではなかったわいと、ひそかにおもいあたりましたことでござります。それにしても十年以来、たえずせんぐんばんばのあいだを往来あそばし、あしたに一塁をぬきゆうべに一城をほふられるおはたらきをなされながら、そのおいそがしいさなかにあってなおおくがたのおんおもかげを慕いつゞけていらしったのでござりましょうか。昔をいえば身分の高下もござりましたものゝ、このたびやまざきの一戦に亡君のうらみを晴らされ、あわよくば天下をこゝろがけていらしったお方のことでござりますから、いまこそ御執心をいろにお出しになりましたものとおもわれます。しかし、ひでよし公はそうとしましても、武強いっぺんのおかたとばかりみえましたかついえ公までがやさしい恋をむねにひそめていらっしゃいましたとは、ついわたくしも存じ寄らなんだことでござります。ひょっとしましたら、これはいろこいばかりではなく、三七どのとしばた