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もうもくものがたり

盲目物語

谷崎 潤一郎

「中央公論」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页

青空文庫

がたの御さいえんの儀がさだまりましたのはそのとしの秋のすえでござりました。この御えんだんは三七どのゝおとりもちでござりますから、おくがたはきよすより、かついえ公はえちぜんより岐阜のおしろへおこしなされ、かの地において御祝言がござりまして、それより御夫婦御同道にて姫ぎみたちをおつれあそばし、ほっこくへおくだりなされました。その前後のことにつきましては、人によっていろ/\に申し、さま/″\なうわさがござりますけれども、わたくしはそのみぎりお行列のなかにくわゝりましてえちぜんへお供いたしましたことゝて、あらましは存じております。当時、ひでよし公がこのお輿入れのことをきゝおよばれ、かついえ公をえちぜんへかえさぬと仰っしゃって長浜へ御出陣あそばされ、おとおりを待ちかまえていらっしゃると申す取り沙汰がもっぱらでござりましたが、いけだ勝入斎どのゝおあつかいにておもいとまられましたとも、またそんなことは根もない世上の風説であったとも申します。もっともひでよし公の御名代として御養子羽柴秀勝公ぎふのおしろへおこしなされ、御祝儀を申しのべられまして、このたび父ひでよしこと、さしさわりのため参賀いたしかねますについては、追って柴田どの御帰国のさい路次においておまち申しあげ、おんよろこびのしるしまでに一こんさしあげ