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すもう
相撲
寺田 寅彦
「時事新報」1935(昭和10)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,122 字 · 9 页
は「長老」の意味があるのである。
このヤコブと天使との相撲の話は、私にはまた子供の時分に郷里の高知でよく聞かされた怪談を思い出させる。
昔の土佐には田野の間に「シバテン」と称する怪物がいた。たぶん「柴天狗」すなわち木の葉天狗の意味かと想像される。夜中に田んぼ道を歩いているとどこからともなく小さな子供がやって来て、「おじさん、相撲取ろう」といどむ。これに応じてうっかり相手になると、それが子供に似合わず非常な怪力があって結局ひどい目にのされてしまう、というのである。これと並行してまたエンコウ(河童の類)と相撲を取ってのされたという話もある。上記のシバテンはまた夜釣りの人の魚籠の中味を盗むこともあるので、とにかく天使とはだいぶ格式が違うが、しかし山野の間に人間の形をした非人間がいて、それが人間に相撲をいどむという考えだけは一致している。
自分たちの少年時代にはもう文明の光にけおされてこのシバテンどもは人里から姿を隠してしまっていたが、しかし小学校生徒の仲間にはどこかこのシバテンの風格を備えた自然児の悪太郎はたくさんにいて、校庭や道ばたの草原などでよく相撲をとっていた。