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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

警部は戸浪三四郎が、第一の射殺事件のときに指摘してくれたヒントが、唯今になって否定することのできない明確な事実を生んでいるのに、思いあたった(この探偵小説家の名論が聞けるものなら)。――それは溺れる者がつかむという藁以上のものであると、警部はみずからの心に弁解をして置いて口を開いた。「どうして、これへ来られましたな」

「これごらんなさい」そう云って彼の差出したのは、初号活字の大きい見出しのついた東京××新聞の号外だった。

省線電車に

大胆不敵な射撃手現わる

前夜と同一犯人か

とあり、今夜の二ツ木兼子射殺事件がデカデカに報道されてあった。間もなく第三の三浦糸子射殺事件が更に大々的活字で報道されるのかと思うと、警部の耳底に、新聞社の輪転機の轟々たる響がにわかに聞こえてくるようだった。

「射撃手――だって、新聞は云ってますぜ。これで三人ですね」

「若い女性ばかりを覘う痴漢射撃手です」と警部は、ムッとして思わぬことを言い放った。「ときに貴方はエロ探偵小説もお得意のようでしたな。ハッハッ」

「冗談云っちゃいけません、大江山さん、貴方は隠しておいでのようですが、省線電車の射撃手は地獄ゆきの標章を呉れておいて殺すというじゃありませんか。