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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

の場合は全く失敗になるわけだった。戸浪に会って気をひいた上で決定しようと考えた。赤星龍子が笹木の愛人であるのは驚いたが、前後二回も、殺人のあった電車にのっていたのは、一寸偶然とは考えられない。実は先刻部下に命じて置いた龍子の動静報告がきた上で、もすこし詳しく考えてみたい。……

大江山警部は電話のある室を出て、階段をプラットホームに下りながら、懐中時計を出してみた。もう夜も大分更けて、ちょうど十時半になっていた。昨日の今頃突如として起った射殺事件のことを思いだして、いやな気持になった。すると、どこやら遠くで、非常警笛の鳴るのをきいた、と思った。

彼は階段の途中に立ちどまった。

「ポ、ポ、ポ、ポッ」

ああ、警笛だ。紛れもなく、上り電車の警笛だ。次第次第に、叫音は膨れるように大きくなってくるではないか。彼は墜落するように階段を駆けくだった。そのとき丁度、叫喚怒号する人間を積んだ上り電車が、驀地にホームへ滑りこんできたのだった。

「やられたかッ」警部は呶鳴った。

「また若い婦人です」と車掌が窓から叫んだ。

「窓があいているじゃないか、あれほど言ったのに」警部は真赤になって憤慨した。