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びざん
眉山
「小説新潮」1948(昭和23)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,141 字 · 15 页
けれども、その無智と図々しさと騒がしさには、我慢できないものがあった。下にお客があっても、彼女は僕たちの二階のほうにばかり来ていて、そうして、何も知らんくせに自信たっぷりの顔つきで僕たちの話の中に割り込む。たとえば、こんな事もあった。
「でも、基本的人権というのは、……」
と、誰かが言いかけると、
「え?」
とすぐに出しゃばり、
「それは、どんなんです? やはり、アメリカのものなんですか? いつ、配給になるんです?」
人絹と間違っているらしいのだ。あまりひどすぎて一座みな興が覚め、誰も笑わず、しかめつらになった。
眉山ひとり、いかにも楽しげな笑顔で、
「だって、教えてくれないんですもの。」
「トシちゃん、下にお客さんが来ているらしいぜ。」
「かまいませんわ。」
「いや、君が、かまわなくたって、……」
だんだん不愉快になるばかりであった。
「白痴じゃないですか、あれは。」
僕たちは、眉山のいない時には、思い切り鬱憤をはらした。
「いかに何でも、ひどすぎますよ。この家も、わるくはないが、どうもあの眉山がいるんじゃあ。」
「あれで案外、自惚れているんだぜ。僕たちにこんなに、きらわれているとは露知らず、かえって皆の人気者、……」