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びざん
眉山
「小説新潮」1948(昭和23)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,141 字 · 15 页
「名門? ピンからキリまであるものだな。」
「住んでいた家が、ばかに大きかったんだそうです。戦災で全焼していまは落ちぶれたんだそうですけどね、何せ帝都座と同じくらいの大きさだったというんだから、おどろきますよ。よく聞いてみると、何、小学校なんです。その小学校の小使さんの娘なんですよ、あの眉山は。」
「うん、それで一つ思い出した事がある。あいつの階段の昇り降りが、いやに乱暴でしょう。昇る時は、ドスンドスン、降りる時はころげ落ちるみたいに、ダダダダダ。いやになりますよ、ダダダダダと降りてそのまま御不浄に飛び込んで扉をピシャリッでしょう。おかげで僕たちが、ほら、いつか、冤罪をこうむった事があったじゃありませんか。あの階段の下には、もう一部屋あって、おかみさんの親戚のひとが、歯の手術に上京して来ていてそこに寝ていたのですね。歯痛には、あのドスンドスンもダダダダも、ひびきますよ。おかみさんに言ったってね、私はあの二階のお客さんたちに殺されますって。ところが僕たちの仲間には、そんな乱暴な昇り降りするひとは無い。でも、おかみさんに僕が代表で注意をされたんです。面白くないから、僕は、おかみさんに言いましたよ、あれは眉山、いや、トシちゃんにきまっていますって。