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いしをなぐるもの

石を投ぐるもの

宮本 百合子

「文明」1946(昭和21)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,052 字 · 9 页

青空文庫

とはなり得なかっただろうと思う。

ところが、この災難は起訴された。執行猶予ということは、不起訴になったということではない。起訴した検事局は、どこまでも刑法に該当するものとして、ただ処罰を猶予したに過ぎなかったのである。法律上は素人である平凡なおとなしい市民は、このことからどんな印象をうけたであろうか。今日になっても、検事局は、やっぱり恐ろしいところであるという強い感銘を与えられた。常識では、災難と思えるところに、摘発の専門家の手にかかると、法律上犯罪となる条件が見出され得るということは、一般人の信頼を、安らかさに置くよりも、気味わるく思わせる。

もとより悪質な諸犯罪、殺人、お家騒動のからくりに対しては、十分専門家としての追究が必要とされる。これから実現する戦時利得税、財産税をすりぬけようとして、大小の各財閥が工夫をこらすであろう術策などは、きっとその専門家的欲望の対象となるであろう。

民主的な検事局というならば、あらゆる場合、基本的な人権の劬り、事件関係に対する社会の現実に立ったリアルな科学的洞察、真の道義的責任のありどころを明確にすることがのぞまれて当然である。