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さばくのまちとサフランしゅ

砂漠の町とサフラン酒

小川 未明

「童話」1925(大正14)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,790 字 · 8 页

青空文庫

また、育てられた家のことや、村の光景などを考えまいとしました。

美しく、みずみずしかった女は、いつとなく、堅い果物のように黙って、うなだれているようになりました。人がなにをきいても、知らぬといいました。

「この女は、つんぼではないだろうか?」

「あの女は、きっとおしにちがいない……。」

そばの人々は、皮肉にも、彼女をそんなようにいいました。

彼女は、まだそれほどに、年をとらないのに、病気になりました。そして、日に、日に、衰えていきました。

「どうせ、わたしは、家に帰られないのだから……死んでしまったほうが、かえって幸福であろう。」と、彼女は思いました。

しかし、彼女は、なにも口にはいわなかったものの、胸の中は、うらみで、いっぱいでありました。どうかして、このうらみをはらしたいと思いました。

彼女は、小指を切りました。そして、赤い血を、サフラン酒のびんの中に滴らしました。ちょうど、窓の外は、いい月夜でありました。びんの中では、サフランの酒が醸されて、プツ、プツとささやかに、泡を吹く音がきこえていました。サフランの酒の色は、女の血で、いっそう、美しく、紅く色づきました。