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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
最近東京市会疑獄事件の「醜市議」達に対する論告が行われているが、単にこうした疑獄が小学校の校長先生にまで及んで来た迄で、別に取り立てて騒ぐ程の珍らしい事件ではない。それは単に、小学校の校長の社会的地位が「向上」して、「有力者」の仲間入りをしたことに過ぎないのである。一頃のサラリーマンが支店長や課長の椅子を極めてやがて重役になったように、又官吏が地方長官から代議士になるように、又軍人は将官になると政治家になれるように、小学校の先生も校長となることによって、地方、地区の有力者に伍するのである。市区町村会や府県会の議員と同じに、地方的情実に基いた「有力者」で、中央の所謂名士ではないが、この地方的、地区的、有力者であることが、この種の議員と同格に、小学校校長の「腐敗」を招くのである。だが、小学校の先生だと云って、有力者に伍して悪いということはどこにもないだろう。
東京府学務課は、この間の消息に就いて、仲々よく観察が行き届いている。罪の根柢は教員や官吏自身よりも、府市会議員の一部又は校長の背後にある大物に潜むものだと見て、俸給の安い弱い教員をいじめながら、こうして巨魁を見遁す処の、警視庁のやり口に不満の意を表している。