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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
でも何でもない筈であるが、如何に不良だとは云え、美しい上流の婦人達なのだから、当局のギャラントリーから云っても、之を保護しなければならないので、従って不良ダンス教師はどしどし検挙されなければならない。それに、ダンス教師を挙げれば挙げる程、美しい不良マダムが露出して来る。裏長屋のお神さんなどとは違って、上流の一見近づき難い貴婦人達なのだ。
馬鹿を見たのは不良ダンス教師や、又はそれらしく見做されたダンス教師で、一遍に多数のモダーンボーイ失業者が出来上った。併しそれだけダンスホールが浄化されたことは勿論で、風紀警察は、女学校の舎監のように安心したのである。
併しダンス教師という職業人は、その職業の鑑札の手前、警察によって風紀取締りを受けねばならぬのは当然だとして、元来が無職で、ダンス教師とは反対に無職であり過ぎるために風紀を乱した有閑マダム達を、風紀警察が摘発したのは、警察権が私事に立ち入ったという観を呈するのを免れないだろう。尤も仮に裏長屋のお神さん達ならば、色々の有利な便宜を所有するだけの金がないから、風紀を紊すにしても私事として紊すことは出来ないかも知れないので、そういう社会条件を変えて見れば、上流夫人達の私事も実は下層の女房達では公共な行為になるだろうから、この有閑マダムの私事を摘発するのは実質から云っ