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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页
て悪くはないだろうが、形式から云うと、どうも物好きなおセッカイだと云われそうである。
処が丁度、某華族の夫人などが中堅で、この良家の不良マダム達の賭博という犯罪が挙がることになって来た。これで物好きなおセッカイも決して、ただの物好きなおセッカイではなかったことになったので、風紀警察の面目も立ったというわけである。
風紀警察の面目が立ったばかりではない。兼ねがね世間から別世界視されていた名流文人達が、有閑マダム一味と賭博をしていたことが判った。之を抉剔することは必ず世間の喝采を博するだろう。警察権の道徳的面目を飾るには、これに増して手頃な材料はあるまい。処が、元来これ等の文人達は、手口は本職的でも、実は遊戯でやっているので、職業的な博徒のような意気の真剣さがあってやっているのではなかったから、この「犯罪」をもっと呑気に考えているので、中には賭博は罪悪とは考えないと云ったようなことを公言しているから、あまり道徳的な御利益は、この検挙によって得られなかったらしい。
この検挙はこういう意味であまり成功ではなかったようだが、それに加えて、都下の有力新聞の或るものは、文人賭博の検挙をする位いなら、社会的にもっと大物の、而も世間で相当知れ渡っている事実である、政界や財界の名士の賭博を、なぜ検挙しないのかと、警視庁にねじ込ん