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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

これで見るとこの歴史はただの流行性感冒だけでは説明されないのかも知れないけれども。

とにかく今まで猫のように大人しかった政党、例のロンドン条約問題で青年将校達を怒らせた若槻総裁の言論などを除けば、軍部の云うことに対しては今までグーの音も出なかった政友会や民政党が、今度の議会で、どう潮時を見計らったのか、猛然として軍部に喰ってかかり始めた。第一に、曽つて極めて唐突に発表された軍民離間に関する声明書に就いて、衆議院ではその動機を説明しろと当局を追求し始めた。荒木陸相に代った林新陸相と大角海相とはそこで、軍民離間を強調した内容の印刷物を配布した者があったから、容易ならぬ事態と考えて声明書を出すことにした、というように説明して除けたが、斎藤首相はどう思ったか「軍部の声明書発表について私は何等相談にもならねば発表後報告にも接して居らぬ」と答弁したものである(読売一月二十五日付)。そこで追求は愈々急となったので問題は秘密会に移されることになり、結局政府が泣きを入れてこの追求は打ち切って貰うことにしたのである。例の「少壮将校」連がこの生意気な追求に憤激したことは云うまでもないが、海相などは、亀井貫一郎代議士にキメつけられて、将来かかる事を材料として声明書は出さないという弁疏をさえさせられることになったのである。