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しゃかいじひょう

社会時評

戸坂 潤

「文藝春秋」1933(昭和8年)年6月~1937(昭和12)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 页

青空文庫

当人達や父兄達は云うまでもなく、直接関係のない吾々世間人もそう信じていたのである。何しろ紹介者が歴とした例の有名な飯田橋の職業紹介所であるし、先方は外でもない満州国の旅館だというのだから。それに満州国当局の後援のあるホテルであったとしたなら、誠に肩身の広い申し分のない就職口と云わざるを得ない。

処が三十二人の内十四人を除いて十八人が、ションボリと最近帰って来たのである。ホテルの主人と争議をかまえて、解職になり、職をさがしても思わしくないので、飯田橋の職業紹介所の手を通じて、並に就職口を内地に見付けるために帰って来たというのである。

十八人の内の一人が云っている、「ホテルの仕事が全然私達の個性(筆者註・「人格」の間違いだろう)を傷けて仕舞ったんです、まあいって見れば宿屋のお女中さんと同じなんです、私達が向うへ着いたのが一月の十八日、ホテルは二十五日に開店となって或る日、向うの偉い人達を呼んで盛大なお祝いがホテルにあったんですが、その夜始めておそくまで全部お酒のお相手をさせられたのです、サービスといっても、お客の御相談、御接待役位にしか考えていない私達がビックリしたのも当然ですわ……」