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かみのごとくよわし

神の如く弱し

菊池 寛

「中央公論」1920(大正9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,929 字 · 28 页

青空文庫

細木などの苦言を受けて、全く悄気て居た河野には同情した雄吉も、こうなっては少しの好意も残って居なかった。彼のやり方を詰責する手紙を送ってやろう。その為に河野との友情が害われても仕方がない。何うせこんな調子で、推移して行けば、早かれ遅かれ、おしまいには破れてしまうのだからと思った。

が、雄吉がそうした手紙を書こうと思って居た時であった。雄吉は、河野から、こんなハガキを受け取った。

○○座の一行と川越に来て居る。今日一座の者と一緒に町廻りをした。ふと、振り返って見ると、僕の乗って居る車にも、河野秀一と云う旗が立って居るのには駭いた。

と云う簡単な文句が、書いてあった。雄吉は、之を見た時、『河野らしい反抗だな。』と思った。

『君達が、忠告すればするほど、ダラシなくなってやるのだ。田舎の役者と一緒に町廻りなどをすれば、君達は又鹿爪らしく非難する事だろうよ。』と云ったような河野の棄鉢的な反抗が、マザマザと見え透いて居るように思われた。雄吉は、河野の気持が、こんなにこじれてしまって居る以上、詰問などをしても、甲斐がないことだと思った。その儘に思い止まることにしてしまった。