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かみだな
神棚
豊島 与志雄
「新潮」1923(大正12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页
がそれも無理はなかった。俺が玩具なんかを買って来ることは滅多になかったのだから。――とは云え、折角萌しかけてきた一家の喜びに、どうきりをつけたらいいものか、俺は少なからず困った。
「出来たんでしょう……私祈ってたから……。」
その最後の言葉がなかったら、俺も何とかして、彼女の希望をもっと長引かしてやったかも知れないが、こうなると、もう待っていられなくなった。
「所が生憎……。」
「え!」
「一文も出来ねえよ。」
見る見るうちに、彼女の顔は変な風に硬ばって、眼の光がぎらぎらしてきた。それが激しい怨み小言の、或は嘆き訴えの、前兆であることを俺は知っていた。で心持ち息をつめて、此度はどちらへ落ちてゆくかと待受けてやった。やがて彼女は云い出した。
「一文も出来ないで、よくまあおめおめ帰って来られたもんだね。今日は岐度まとまった金を拵えて、お前を安心さしてやると云って、出かけたじゃないか。ほんとに意気地なしだね! さあ、今朝の言葉は何処へいったの? お金は何処にあるの?……愚図のくせに、極りが悪いということだけは知ってるとみえて、子供に玩具なんか買ってきてさ、その手で私を瞞そうたって、そうはゆかないよ。