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かみだな
神棚
豊島 与志雄
「新潮」1923(大正12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,427 字 · 44 页
毎度ありがとうございますって、人を馬鹿にした空世辞も、満更嬉しくないでもなかった。
電車に飛び乗って、暫くして降りて、曲りくねった小路をつきぬけて、自分の家の門口に立った。耳を澄したがひっそりしている。はてな? と思う心に用捨なく雨が降りかかってくる。俺は思い切って、勢よく格子を開けて中にはいった。
お久が二人の子供を相手にぼんやりしていた。見ると、神棚には明々と蝋燭がともされていた。また例のことが初ったなと思いながら、俺の顔には一人でに苦笑が上ってきた。
「どうだったの?」とお久は上目使いに俺を見上げて尋ねかけた。
俺はそれには答えないで、袂からキューピスさんを二つ取出して、子供達の前に投げ出してやった。子供達は嬉し声を立ててそれを拾い取った。
「まだあるぞ。」
そして俺はまた二つ投り出してやった。
「やあ、おかしな顔をしてる!」
珍らしそうにキューピスさんを弄くってる子供達の心より、それを見てる俺の心の方が一層喜んでいた。俺はにこにこ笑いながら、バットに火をつけて吸った。
「じゃあ。出来て……。」
お久は何と感違いしたか、もう顔の相恰をくずしかけていた。