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しんけいすいじゃくてきやきゅうびがくろん

神経衰弱的野球美学論

坂口 安吾

「文学界 第一巻第四号」1949(昭和24)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,681 字 · 8 页

青空文庫

プロともなれば、試合に生命がこもるべき筋合のものであるから、審判は神聖などゝいうバカな神ガカリは有り得ない。誤審に抗議を申し入れる風習は、そこに正当な理由がある限り、却って試合をエキサイトさせ、プロの魅力となるだろうと僕は思う。

次に、タマ貰い(たしかにタマ貰いだろうと思うが)の子供が、どうもプロ野球の気分とつり合わない。見物人にしたゝかファウルを叩きつけておいて、その方には頓着なく、たゞボールの返還のみを、これ当然として、要求する。犬ならチンチン、オアズケなどするのであるが、このタマ貰い小僧どもはミジンもユーモアなく稚風なく、ただタマを返送すべきことを頑に要求する態である。あれを見るたびに僕は痛く腹を立て、ファウルはタマ貰い小僧に返送せずに、聯盟の役員にモーニング、シルクハットなどかぶらせてグランドへ立たせておいて、そのドテッ腹へ投げ返すことにしたらよろしかろうと内々遺恨をむすんだ程であった。

僕の見た二週間の野球見物に、これと云ってエキサイトしたゲームはなかった。得点はクロスしても、試合の内容はエラー続出の有様だったり、本当に野球をたのしませてくれたというのは一つもなかった。