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きんだんのししん
禁断の死針
野村 胡堂
「講談倶楽部」1929(昭和4)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,500 字 · 7 页
元はと言えば門弟共の啀み合いからであったが、互に若気の至り、引くに引かれぬ意地ずくになって、出逢い頭に果し合いをしてしまったものだ。その時受けたのが此疵――、尤もこれだけ斬られると一緒に、拙者の刀は相手の肩口から乳の下へかけて、袈裟掛けに斬り下げたから、この勝負は拙者の勝ちで、疵を受け乍らも、見事に相手を討ち果して退散したものだ、いやはや、若い時の事は、思い出しても冷汗が流れる――」
と言うのを聴いて、若い按摩はサッと顔色をかえました。が、後ろ向になって、腰の辺を揉ませて居りますから、原口作左衛門は少しも気が付きません。
「相手の槍術の先生というのは、何んと言う方で御座いましょう」
「忘れもしない、磯見要と言ったよ」
「すると、旦那は、若しや黒沢岩太郎様と仰しゃいませんか」
「エッ」
「いえ、驚きになるには及びません。実を申せば私も仙台の生れ、幼少の折、旦那様と磯見様との果し合いの話は承って居ります」
「そうか、――お前も仙台の生れか――」
「ヘエ、旦那様が道場を構えなすった、片町の河岸っぷちで生まれましたが、流れ流れて江戸へ参り、人様の足腰を揉まして頂いて、斯う細々と暮して居ります」