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わたしのせんせい

私の先生

林 芙美子

「文芸首都」1935(昭和10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,888 字 · 6 页

青空文庫

今考えだしても学校時代は何の愉しみもなかった。私は、あんまり女学校時代のことを書かないけれども、森先生以外にはなつかしいと思う先生がひとりもない。卒業も出来かねた私を卒業さしてくれたのは大井先生だと云うことを同|組のものに聞いたことがあったがこれはうれしかった。卒業写真に、私は黒木綿の紋付を着てうれしそうに写っているが、これは下級生の紋付を借り着して行ったもので母もその当時は、卒業出来るのなら工面してでも紋付を造ってやったにと云い云いした。

この学校を卒業して十三、四年になるが森先生は木更津の中学校にいまだにいられるかどうか、私はそれきりお逢いしたことがない、いまでは老齢になっていられることであろう。私はこの先生にだけは逢いたいと思っている。