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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
13 黒白帖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页
彼は、尊氏より一日おそく八幡から入洛して、錦小路の自邸に入り、斯波、石堂、山名、桃井の諸将に囲繞され、なんとしても、威風りんりんたるものがある。
すぐ時局収拾の相談もすすめられた。しかしいまは直義が主体で、尊氏は従でしかない。
尊氏は、希望した。
「政務の主権は義詮におき、直義はそれを扶ける地位にあって欲しい」と。
直義は承認した。
尊氏は、もひとつ求めた。
「自分に附随して今日までひとつに来た将士へも、直義へ附いた将士と同様、すべてに平等な恩賞を授与してやりたい」
それも、直義は受けいれた。その代りに直義もまた一条件を尊氏に呑ませた。このさい正式に、直冬を九州探題にするということだった。
これで一おう和解は円満にまとまったといえる。内訌は一時的な紛糾にすぎない。幕府は微動もしない。今日の西方寺の花見の宴はよく世上にそれを映す意味においても心からな人と花との融和でなければならなかった。だが、尊氏の見る花、直義の見る花、義詮が見る花、みな違う。三者三様だった。杯も冷えがちに、ともすれば、どうしようもない白々しさが寒々とそこらに漂う。
「こんな日には」
尊氏は直義の横顔を見た。