轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

事実、師直は、天龍寺落慶の翌年の夏、二ヵ月ほど寝こんで出仕も欠いた。病名は“蚊触”だとある。蚊触とはつまり発疹のことらしい。「園太暦」では瘡疾に罹ったのだと書いている。

病後の秋であった。師直は一夕、佐女牛の佐々木道誉の招きでその邸へおもむいた。

――何の用意もないが、ご病後の鬱散じに、という軽い意味で、誘いには、御舎弟も共にとあったが、その師泰は、

「いや道誉の客となるのは苦手だ。闘茶か、立花(生け花)か。やれ香道の、連歌のとくる。まずは兄上おひとりで」

と、逃げてしまった。

師直も夜は例の女の許への“宮廻り”がいそがしい。だからたいして気もむいていないが、道誉には妙な魅力にひかれていた。彼ほど諸家の裏面に通じている男はない。執事の自分ですら知ってないような機密まで彼の口からはまま聞かされる。かたがた、何かのばあいのためにも自家薬籠中の物にしておかねばならぬ人間と、思うのだった。

「ひとくちに、婆娑羅婆娑羅とよくいうが、這奴はそれだけのものではない」

今も夕風の巷を行く輿のうちで、師直は、道誉のつらだましいにつれて、かつての一事件などを思い出していた。