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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 页
で、それを姓のように、
赤橋殿
と、みな呼んでいる。が、正しくは、北条殿といわねばならぬ。執権北条氏の一族なのだ。
当主、赤橋守時はまだ若い。
その父、前の六波羅の探題北条久時は、もう世になかった。――が守時は、父がのこした多くの知友のうちでも、上杉憲房だけには、
「何かのとき何を打明けてもよい人物。恃めるお人」
として、いまだに、厚く交わっていたのであった。
途々、それらを思い出して、
「わからぬものよ」と、憲房は痛感した。「……亡き久時殿から、遺した子らをたのむぞといわれた身が、逆に、お子の赤橋殿から、こんどのようなお助けに会うとは」
駒は、扇ヶ谷に近づいていた。
もう屋敷は遠くない。その門は、見えだしていた。
――すると、どこかで見たようなよその侍が、その門側にたたずんでいたが、憲房の姿を遠くに見ると、彼の方から、飛ぶように駈け出して来た。
そして、憲房の馬の前に、べたと、ひざまずき、
「おなつかしゅうござります」
と、両手をついた。
憲房は、駒のたてがみ越しに、しげしげと覗きおろして。
「や。たれぞと思えば」
「一色右馬介にござりまする」
「こりゃ久しい。