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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
吉川英治『私本太平記(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 页
――家柄では劣らない足利家といえ、こちらは、不遇の底にある地方の一守護。
どうしてだろう?
彼の純情が、怪訝らせる。
わけて、鳥合ヶ原のこと以来、太守高時のお覚えはたいへんいいそうだが、諸大名の間では、よい笑いぐさになっているこの高氏にちがいない。その笑われ者へ、妹を娶ってほしいと申し入れてきた赤橋守時の心は、いったいどこにあるのか。
「若殿。たいそう、お考え込みでございまするな」
「はははは」
高氏は笑いだした。
ふと、固着していた自分を、自分から突っ放してみると、ほんとにおかしくなったらしい。
「なにせい、生涯のことだからなあ」
「ごもっともです」
「それに、登子どのが承知とは、ちと信じられなかったのだ。正直に申せば、わしはあの妹君が嫌いではないが」
「では、内々のご承諾を」
「まかせる、伯父上に」
「その由、赤橋殿へお答え申しあげておいても」
「むむ、いいだろう」
「憲房。これで、ほっといたしました」
だが、このことには、もちろん、執権高時の承認も第一に得なければならず、まだごく内々の下約束にすぎなかった。婚儀の時期、結納などは、すべてこれからの運びとなろう。