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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 页

青空文庫

「――久しく姿の見えなんだ日野蔵人俊基どのが、文談会に姿を見せ、また会衆もこれまでになく多勢でした。てっきり、彼らの陰謀が着々すすんでいるものに相違ございませぬ」

急遽、北ノ庁の一室に、常盤範貞が腹心をあつめて凝議しだしたのは、そのためだった。

また、時も時といおうか。

その場へ、船木頼春の舅、斎藤四郎左衛門利行が、むすめの密告を持って、訴えに出たものだった。

その晩である。

六波羅ノ庁は、公然と、在京中の武家や、大番の士にたいして、足止めを命じ、

「――明日中に、兵馬の用意をととのえおけ。行く先は、摂津葛葉ぞ」

と、布令出した。

そして、なお、

「発向の時刻には、総門の太鼓を打ち鳴らし、大和口の広場にては、勢揃いの陣貝あるべし。それより一刻以内に、諸士、相違なく集合の事――」

ともあった。

もう数ヵ月前から、摂津ノ葛葉地方に、地頭と土民の紛争が起っており、それがなかなか下火になりそうもない騒ぎだとは、たれもとうから耳にしている。

で、召集の出た夜の反響も、

「たかの知れた庄家と領民の争い事、出兵といっても、威嚇で終るであろう」

と、みな観ているせいか、しごく静かなものだった。