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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 页

青空文庫

しかし、否定はやさしいが、否定に伴う確証は一こうない。たんに「夢」などとは受けとり難いとするだけの論のようだ。

ところが、古人の夢の扱いは、現代人とはたいへん違う。夢告、夢想、吉夢、凶夢――そして夢占などもおこなわれていた。

つね日ごろの、たあいもない雑夢はとにかく、何かのときは、人間の夢も、神や仏に通じるものと観、あだし事とはしていなかった。――例は、歴史の中にもたくさんある。

だから、笠置での天皇とその側近が、意識して、

「奇異なお夢見」

を作為して、利用していないとは決していえまい。

北条幕府の天下を向うにまわしての、展陣の第一歩だ。

こんな大勝負へのぞむさい、もし元来の武将だったら、かならず士気を考えよう。大いにそれを振るわすため、途上の神仏に願文をささげ、また何らかの奇蹟を行い、三軍を沸騰させて出向くのを常道とする。兵法として、はばかるまい。

いわんや、笠置の今。

地勢こそ嶮だが、また、草木もなびくべき天皇旗だが、いたずらに山風寒いのみで、馳せ参じてくる者といっては、微々たる小族烏合の輩ばかりだった。

おそらくは、側近輩も、

「案に相違したことよ」