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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

「えっ、何が? どこで何があったんだね」

「大蔵のおやしきだよ。……あの足利屋敷の内に、御執権の命令で、質子として、足止めをされていた足利どののお子が、いつのまにか、いなくなったという騒ぎなんだ」

「へえ、あの千寿王さまか」

「まだ四ツ五ツの、お小さいお方だそうだ」

「もうひとかたの、竹若さまとか仰っしゃる方は」

「それも、叔父御の法師にお預けとなり、伊豆の寺に閉じこめられているそうな」

「じゃあ、その和子も、逃げ出したろうか」

「さあて。そこまでは分ってないが、質子が脱け出したのは、父御のさしずにちがいない、すわやもう、足利のむほんと極まッたぞ、と執権御所のご評議やら、すぐ八方へ追手が駆けるやらで……それでこんな、馬ぼこりが舞う始末じゃげな」

「ふーむ、足利殿がの」

町じゅうは沈んだが、しかしまだ、半信半疑ではあった。

けれど午後にはまた、大蔵屋敷のほか、二軒の館が、幕府の兵にかこまれたのを、彼らは目で見た。

一つは、鶴ヶ岡下の赤橋守時の邸であった。高氏の妻、登子が預けられていた実家である。

が、登子は、姿を消しもせず、ちゃんとそこにいたという。

さらにもう一軒の方は、小町ノ辻の新田義貞の屋敷で、昨今、義貞も妻子もいないことは、幕府方にもわかっていたのに、あえて差向けられた兵は、土足で乱入するやいな、すぐ屋敷じゅうの