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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

まるでもう新しい宮門へ、先に邪神を入れているようなものよ。おろかさ、物騒さ、見てはいられようか」

「…………」

「清忠、まろの顔を見て、何をあきれ、何をかおののく? ……。とまれ、まろは坊主にもならん、軍も解かん。おこたえは、これだけぞ」

坊門ノ宰相清忠は、そうそう下山して行ったが、途中の輿のうちでも、瘧病に罹ったような気だるい熱ッぽさを持ちつづけて帰った。

――このうえまだ、合戦再発のいぶりを思うなどは、思うだけでもやりきれたものではない。

さらには、こんなことを、いかに大塔ノ宮のご真意にせよ、そのまま奏上したものかどうか。彼は大いに迷い悩んだが、嘘を作るわけにもゆかない。やがて簾下にありのまま伏奏していた。

高氏を憎み、また高氏の越権をあげて、

「彼こそは、第二の高時だ」

と、いったという大塔ノ宮の弾劾は、宮中をおどろかせた。

蔽いえないご困惑をみせたのは後醍醐だった。復位早々の政治始めに、ゆゆしい難障害を見たわけだし、しかもその一投石は、わが子によってなされたのだ。当然な親心というものもある。

「……他言すな、清忠。ここに居あわす諸卿も、同様に」

と、清忠の復命は、一切、かたく口外を禁じられた。