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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

しかしまた、それは事難しい論功行賞の上における等級の、一種のはぐらかしと見られないこともない。

いかに朝議の決定までには、上で揉みに揉んだ結果だったか。まず表の一端にもそれは出ている。

足利高氏を

従三位、左兵衛ノ督に任じ、武蔵、常陸、下総の三ヵ国を賜る。

同苗、直義には

左馬ノ頭をさずけられ、三河の一部と遠江一国を。

新田義貞を

正四位ノ下、右衛門佐に叙し、越後守とし、あわせて上野、播磨を下さる。

同、脇屋義助を

駿河守に。

また、楠木正成には、摂津、和泉の一部と、河内守への叙任がみられ、また船上山いらい忠勤の名和長年には、因幡、伯耆の両国があたえられた。

それ以下、幾多の武門に、それぞれな恩賞下附が沙汰されたが、ここにたれの目にも、

「これは、何かの間違いか」

とすら怪しまれた例外中の例外があった。

播磨の赤松円心則村にたいする授賞だった。

彼の軍功は、顕著である。――おそらくは円心自身も、名和長年や千種忠顕には劣らぬものと自負していたにちがいない。

ところが、発表になってみると、佐用ノ庄一所を賜う、とあるだけだった。――のみならず前から所領していた播磨の守護は取り上げて、これを新田義貞の新知行の方へ組み入れ、人の物で他人の恩賞を行っている。